昨日、舞鶴市議会では民生労働委員会が開催され、市民病院の指定管理者にかかる議案などが審議されました。この市民病院の条例改正の議案だけでおよそ3時間、その大半が私と理事者とのやり取りだったのですが、その中で、政策的なところ以前の、法令や条例を逸脱しているのではないかと思われるところがあり、その疑念は議案審査が終わってしまった今でも拭い去れていません。
私が特に強く指摘したのは、『職員処遇に関する協定書』についてです。これは平成18年、つまり今年の3月31日付で行政側と病院の労働組合とで結ばれているのですが、この中で3ヶ所、法的根拠があるのかどうか質問しました。
まず最初に、協定書の『1.平成18年3月末を持って退職する職員に支給する退職手当は、別表1の基準を用いて計算した額に2割の特別加算を行い算定するものとする。』という部分についてです。
これは分かりやすく言うと、『勧奨退職の規定を採用して割り増しで退職金を払います。そしてさらにそれを2割り増しで払いましょう。』ということで、割り増しをさらに割り増して退職金を払うという約束をしてしまっているのです。
退職を勧奨する場合に割り増しで支払うのは条例で規定してあるとおりで問題ありませんが、さらに2割の特別加算をすることなど聞いたことがありません。この法的根拠を尋ねると条例の中の『在職中勤務成績が優秀であり、特に功績があったと認めた場合に3割までの範囲で加算できる。』という条項を適用したというのです。
勤務成績が優秀とか功績があったとかいうのはあくまで個人に対してであって、組合との協定書には優秀なものとか功績があったものなんてまったく関係なく、退職する全員に支払うとしているのですから、理事者の説明はまったく該当しないのではないでしょうか。条例を捻じ曲げて無理やりこじつけているのではないかと思えてなりません。
次に、協定書の『3.3月末に退職する臨時職員に限り、別表2の基準に基づき慰労金を支給するものとする。』という部分についてです。
臨時職員がやめるときに慰労金を支払う・・・やはり聞いたことがありません。この件についても法的根拠を尋ねると、病院内の規約で謳ってあるものの、法令や条例においての根拠は『ない』のだそうです。つまり自分たちで勝手につくった規約に則って支払ったということになります。民間の会社なら自由ですが、公営企業でそんなことが許されるのか、本当に理解できません。また規約の中身についても、上記で述べた『勤務の内容が特殊』だとか『夜勤などがあり非常に激務』である場合に支払うことになっているらしく、そのことに触れて『ではこれまでに支払った例はあるのか』と尋ねると、それも『ない』のだそうで、そうすると今回辞めていただいた臨時職員だけが、56人とも一律に『特殊で激務』だったとでも言いたいのでしょうか。ムチャクチャです。
さらに『4.委託化に際し、病院に残留する職員の身分は、引き続き公務員の身分とする。』という協定まで結んでいるのですが、この意味は、民営化しても舞鶴市からの派遣職員として公務員の身分を保証する、ということです。この根拠は『公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律』によるものという説明を受けました。しかしこれによると『派遣の期間は3年、特別に認めても5年』となっています。100歩譲って派遣を認めたとしても職員の身分保障などできないではないかと問うと、『市民サービスの低下を招く恐れがあるときはさらに延長できる、という特記事項がある。』と言うのです。公務員でなければ市民サービスが維持できないのであれば、そもそも民営化する意味がありませんし、公務員からの手助けがなければ運営できない法人に委託するのもあり得ない話です。大体これは身分を保証するために結んだもので、『市民サービスを低下させない』ための協定でないことは明らかです。
これらを一つ一つ深いところまで追求していくと、理事者側は答えに窮し、『法令を逸脱しているとは考えていない。あくまでその枠内でやっていると考えている。』という主旨の答えしか言いようがなくなってしまっていました。しかし客観的にこれらの事実を一つ一つ捉えると、果たして本当に理事者が言うように『法令や条例の範ちゅう』だと断言できるでしょうか。むしろ民事訴訟を市民団体等から起こされた場合、本当に退けられるのかどうか大きな疑問が残ります。
この逸脱しているのではないかと思われる部分によっての支出は合計で1億円にも上ります。もし訴訟を起こされた場合、この協定書を見る限りでは、訴えられるのは江守市長で、舞鶴市に返還しなさい、という内容になると思われます。これに対抗する法的根拠は私が感じるところでは非常に薄く、たった3枚程度の協定書の中に大変な問題が隠されていることが分かり、何とも言いようのない気持ちになってしまいました。
また委員会の中で、『公金の不当な支出の疑念が拭いきれておらず、これらが払拭できていない今の状態で審議を進めるということは、民生労働委員会自体も黙認するということにつながりかねない。市民病院の議案をこのまま議長に差し戻してもらいたい。』と委員長に提案しましたが、却下されて議事はそのまま進み、賛成多数で可決すべきものと決してしまいました。
そのほかにも、常勤の医師が他の病院と掛け持ちで勤務していたり全員が臨時職員の身分であったり、いろんな事実が明らかになって今の市民病院の体制がいかに脆弱なものであるかも浮き彫りになったような気がします。これでは今後、地域医療を支えていくことなど非常に困難と言わざるを得ませんし、これまでから言い続けてきた『確固たる運営方針と長期ビジョンの構築』の必要性を改めて強く感じる委員会となりました。